【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~
 ここしばらく、私たちはまともに会っていない。正確には、私が一方的にシリウスを避けていた。

 手紙や王宮への招待状は数え切れないほど貰った。シリウスがわざわざシレーネ家に使いを出し、面会を求めてきたこともある。だが私は、全て断っていた。
 
 さらには、孤児院への慰問も彼がこない平日に変え、会う機会を徹底的になくしていたというのに。

(ここで会っちゃうなんて)
  
 会えばきっと、この気持ちを諦めきれなくなる。

 『どうしても話したい』とシリウスはなおも食い下がってくる。

 どう返事をしようか悩んでいると、廷臣がやってきて一礼した。


「シリウス様、こちらにいらっしゃいましたか。お相手が到着されております。至急お越し下さいませ」
 
「……見合いなどしないと言ったはずだ」

「それでは困るのです。我が国では、王妃の存在なくして王にはなれませぬ」

「そのような慣習、時代遅れにも程がある」

「古き良き伝統をお守り下さい。とにかく、お早くお越し下さいませ」

 お世継ぎを作るのも王の重要な務め。

 シリウスが王位継承者に選ばれた場合、一番の問題は婚約者がいないこと。
 
 王位争いでシリウスの勝利がほぼ確定している現状、廷臣たちは未来のお妃選びに奔走しているのだ。
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