【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~

甘い夢のひととき

 屋敷に着くと、入浴を済ませ、夕食もそこそこに自室へ引きこもる。
 
 早く寝て気分を変えたいのに、昼間のシリウスとの会話がちらついて眠れない。

 ソニアに「よく眠れる薬が欲しいの」と相談すると、生薬由来の体にやさしい眠り薬をくれた。それを飲んで自室に戻る。
 
 ベッドへ入る気になれなくて、ソファに座って月を眺めた。はぁ、と一つため息をこぼす。

「絶対、嫌われたわよね……。ああっ、でも仕方ないじゃない! そもそも殿下はエスターが好きなんであって、今の私が好きなわけじゃない……。自分で自分に嫉妬するって、どういう状況よっ!」

 私は頭を抱えて、長ソファの上でジタバタのたうちまわった。

「胸が苦しい……苦しすぎるっ! 世間の女の子は、恋するたびにこんな辛い思いしてるの? タフすぎない??」

 独り言をいっているうちに段々薬が効いてきた。少しずつ眠気が襲ってきて、そのままソファの上で微睡(まどろ)む。

『ベッドにいかなきゃ』と思ったその時、窓の方からコツ、コツ――という音が聞こえてきた。
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