【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~

初恋のつづき

 その日の午後。意を決して孤児院へ行くと、やはりシリウスが居た。

『好きだ』『私も好き』なんて甘ったるい昨夜の出来事が頭をよぎり、照れくささが微熱のようにぶり返す。

 しかもシリウスが「昨日はよく眠れたか?」なんてイジワルに聞いてくるものだから、私は見事フリーズした。

 真っ赤な顔で口を開け閉めする私に、子供たちが首をかしげる。

「アデル、顔まっかだぞ! カゼか?」

「違うわよ! あれは”恋わずらい”なの!」

「コイワズ……なんだそれ?」
 
 心配そうな顔をする少年に、おませな少女が耳打ちする。が、そこはお子様。声が大きすぎるせいで、会話の内容は筒抜け。

 追い打ちをかけられた私は、とうとう顔を覆ってしゃがみこむのだった。

 それから、いつも通り振る舞おうとするものの、つい上の空になってしまい。

 見かねたシスター・クラーラに「二人でちゃんと話をしてきなさい」と諭されてしまった。

「聖堂の屋上は、普段は立ち入り禁止ですが、今回だけ特別ですよ」と鍵を手渡され、私たちは送り出された。
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