【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~
 聖堂の頂上は展望階になっており、かつては観光スポットとして有名だったという。

 しかし現在は、孤児院の子ども達が登ってしまわないよう、立ち入り禁止区域になっている。

 実は、子供の頃。私とシリィは二人で、ここの入り口まで来たことがある。

 鍵置き場からこっそり鍵を拝借し、中に入ろうとしたのだが……。たまたま通りかかったシスター・クラーラに見つかり、潜入作戦は失敗。
 
 
(二人仲良く、お説教されたのよね。ふふっ、懐かしい)
 
 
 鍵を開けると、石造りのらせん階段が上へと続いていた。確かにこれは、子供が登るには薄暗くて危ない。大人でさえちょっと怖い傾斜だった。

 一歩一歩、足場を確かめながら登る。ふいに「アデル」と声をかけられ、顔をあげる。

 先を歩くシリウスが、こちらに手を差し出していた。『つかまれ』と目で促され、彼の手に自分のを重ねる。力強い腕に支えられ、一気に安心感が増した。
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