【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~
「始末しました」とダニエルから報告があったのは、王位継承者を決める日の前日だった。

 王宮は大混乱。シリウス派の廷臣は慌てふためき、騎士団は朝から捜索に駆り出されている。

 メイナードとあたしは、ほくそ笑んだ。

 
 必死の捜索も虚しく、ついに今日――王位継承者を決める時がやってきた。


 大広間には、各地から集まった貴族諸侯や有力者、廷臣がずらりと並んでいる。

 玉座には国王が座り、その一段下にメイナード、隣にあたしが腰掛けた。

 シリウスの席は当然ながら空いている。式典の開始五分前になっても、姿を現わさない。

 大本命だった第二王子の不在に、人々は一層焦りをにじませる。
 
 
 時計の針が頂点に達するまで、残り4分、3、2、1……。

(もうすぐ……あたしが、この国で一番偉い女になる)

 これは、あたしが王妃になるまでのカウントダウン。
 胸の高鳴りがおさまらない。ああ、今日はなんて素晴しい日なのかしら。

 途中シナリオが狂って窮地に陥ったけれど、最後はシリウスでも、アデルでもなく、このミーティア・ロザノワールが勝つの。
 
(だって、この世界の主役はあたしなんだもの!)
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