【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~
私がアデル・シレーネという美しい少女を知ったのは、数年前――良家の子女が通う女学院で、同じ教室になった時だった。

 病弱なアデルは当時から学校を休みがちで、特定の集団に入れず孤立していた。

 おまけに美人なものだから同級生に妬まれ、いじめの標的になっていたのだ。

 貴族令嬢であれば、いじめは過激化しなかったのだが、アデルの父親は資産家とはいえ、爵位のない平民。

 豊かな財力より身分を重んじる階級社会では、アデルは所詮(しょせん)『成金の娘』。貴族令嬢たちは寄ってたかってアデルをいじめた。


「私、体は弱いし、いじめられるし『人生、何にも良いことないなぁ』って絶望してたの。そんな時、あなたが現れた。王子様みたいに私を救い出して、一番の友達になってくれた」

「救い出すなんて、大げさよ。見て見ぬ振り出来なかっただけなの」

「エスターのそういう芯の強いところ、すごいと思うし大好きよ」

「……強くなんか、ないよ……」

 
 私はうつむいてドレスを握りしめた。

 強くなんかない。現にさっきまで、ミーティアに復讐してやろうと思っていたんだから。
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