【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~
「エスター様、聞こえますか。私はシレーネ家の使いの者です。あなたを助けに参りました」
 
「アデルの家の方? 私、ここから出られるの?」

「はい。ただ、確実ではございません。その包みは、一時的に仮死状態になる薬です。急いで作らせた試験薬なので命の保証はありません。そのまま心臓が止まるか、生き返るかは五分五分です。しかし、外に出るにはこの方法しかありません」
 

 扉の向こうにいる使者は静かな声で――「今すぐ、選んで下さい」と言った。
 

「ここで死を待つか。それとも、死ぬ覚悟で生きる可能性に賭けるか。すべては、あなたの選択次第です。エスター・ロザノワール様」

 諦めてここで朽ち果てるか、挑戦して息絶えるか。

 どちらにせよ、等しく死が待っているのなら――。

 
「私は、諦めない。泣き寝入りはごめんよ。生き抜いてやるわ――!」

 
 薬包を掴み、白い粉を全て口に含んで、スープで一気に流し込んだ。

 口内に苦みが広がる。

 刹那――、ドクンと胸に激痛が走った。

 血の気がどんどん引いていき、手足の先が痺れて冷たくなってゆく。

 体を支えていられず、固い床に倒れ込んだ。
 まぶたが重たくなる。もう、目を開けていられない。

 脱力する体。動かない四肢。急速に薄れていく意識。
 
 
 生と死の狭間で、私は魂に刻み込まれた記録を思い出した――。
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