【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~

アデルの想い

(私……助かったんだ……)
 
 ぼんやり天井を見つめていると、シレーネ夫人が私を抱きしめた。

「……し、れーねさま?」

「良かった……貴方が目覚めてくれて……本当に良かった。……ありがとう」

「おれいを、いうのは、私のほう、です。ありがとうござい、ます」

 長い監禁生活と薬の副作用で、思うように喋れない。

 かすれた声を振りしぼって感謝を伝えると、シレーネ夫妻は感極まった様子で何度も頷いた。

 私は療養所から救出されたあと、三日間眠り続けていたらしい。

 運び込まれた場所は、シレーネ様が持つ隠れ屋敷の一つ。
 
 巨大商会の元締めであるシレーネ家は、さまざまな人脈と拠点を持っていると、以前アデルから聞いたことがある。
 
 この屋敷にいるのは、シレーネ様が信頼を置く使用人のみのため、私が生きているという情報が漏れる心配はないらしい。
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