【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~
 医師によると、私は栄養失調で衰弱していたものの、命に別状はないとのことだった。

 診察を終えたあと、シレーネ様が現状を説明してくれた。
 
「君は薬で仮死状態になったあと、私の部下によってここに運び込まれた。救出の途中、棺の中身をダミーにすり替え、郊外の墓地に埋葬済みだ。そのため君は表向き亡くなったことになっている」

「私の無罪を信じて、救い出して下さり、本当にありがとう、ございます」

「そんな、お礼なんて水くさいこと言わないで」
 
「妻の言うとおりだ。礼には及ばないよ。それに、このとんでもない計画を編み出したのは他でもない、アデルなんだ。我々は、愛娘の最後のワガママを叶えているだけさ」

「死を偽装するとは、我が娘ながら突飛な事を考えるものだ」とシレーネ様は肩をすくめた。
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