【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~
手紙を胸に抱いてうつむくと、大きな手が私の頭を撫でた。
顔を上げると、目を赤くした夫妻がこちらを見ていた。
シレーネ様が、私に目線を合わせて語りかけてくる。
「エスター、幸せになりなさい。君が悔いのない人生を送ることが、娘の最後の望みであり、私たちの願いだ」
「シレーネ様……」
「さぁ、今日はもう休んで。続きは明日にしよう」
促されてベッドに横たわる。シレーネ夫人が、あやすように私の頭を撫でてくれた。
悲しくて眠れそうになかったのに、横になった途端、強烈な睡魔に襲われた。
「アデル……」
私は大切な手紙を胸に抱いたまま、シレーネ夫妻に見守られて眠りについた。
◇
翌日、目が覚めると、ベッドサイドには私の手を握ったまま眠る夫人と、椅子に腰かけて船をこぐシレーネ様がいた。
看病させてしまい申し訳なく思っていると「子どもを心配するのは当たり前だ」と言われてしまった。
実の両親は、私が熱を出して寝込んでいても、医者を呼ぶだけで看病などしなかった。異能に影響がないと知るや否や、さっさと部屋を出て行ったのを覚えている。
(シレーネ様の子どもだったら、もうちょっと幸せな人生だったのかな)
食事を終えると、次は医師の診察だ。
シレーネ様が使用人に「先生をお呼びしなさい」と命じると、ほどなくして白い髭をたくわえた、小柄なおじいさん先生が入ってきた。
顔を上げると、目を赤くした夫妻がこちらを見ていた。
シレーネ様が、私に目線を合わせて語りかけてくる。
「エスター、幸せになりなさい。君が悔いのない人生を送ることが、娘の最後の望みであり、私たちの願いだ」
「シレーネ様……」
「さぁ、今日はもう休んで。続きは明日にしよう」
促されてベッドに横たわる。シレーネ夫人が、あやすように私の頭を撫でてくれた。
悲しくて眠れそうになかったのに、横になった途端、強烈な睡魔に襲われた。
「アデル……」
私は大切な手紙を胸に抱いたまま、シレーネ夫妻に見守られて眠りについた。
◇
翌日、目が覚めると、ベッドサイドには私の手を握ったまま眠る夫人と、椅子に腰かけて船をこぐシレーネ様がいた。
看病させてしまい申し訳なく思っていると「子どもを心配するのは当たり前だ」と言われてしまった。
実の両親は、私が熱を出して寝込んでいても、医者を呼ぶだけで看病などしなかった。異能に影響がないと知るや否や、さっさと部屋を出て行ったのを覚えている。
(シレーネ様の子どもだったら、もうちょっと幸せな人生だったのかな)
食事を終えると、次は医師の診察だ。
シレーネ様が使用人に「先生をお呼びしなさい」と命じると、ほどなくして白い髭をたくわえた、小柄なおじいさん先生が入ってきた。