【コミカライズ】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~

弱い『自分』を脱ぎ捨てる

「先生はアデルの主治医になる予定だったんだ。医学の最先端、メティス共和国の外科医で、腕前は国内随一だよ」

 シレーネ様が紹介する間にも、先生は私の顔をのぞきこみ触診を始める。

「どうですか」とシレーネ様が尋ねると、先生は片手でひげを撫でながら「ふむ」と頷いた。

「難しい手術になるでしょうな。当然、時間も費用もかかります。……が、わしの腕と施術、我が国の化粧技術で、ある程度似せることは可能でしょう。あくまで、わしだから出来る施術ですぞ、他の医師には到底できますまい」

 先生はドヤ顔でふんぞり返った。自分の腕にかなり自信があるらしい。
 
 何をされるのか分からなくて、ちょっと怖い……。けれど口を挟める状況でもないため、私は黙って事の成り行きを見守った。

「それで十分ですよ。もとよりアデルは病弱で、外にも出ず、人と会う機会もありませんでしたから。彼女がエスターだと分からない程度に変えて貰えれば、大丈夫でしょう」

「ふむ。分かった。ではわしは、一足先に共和国へ戻って準備をしておこう」

 先生は白衣を(ひるがえ)し、出て行ってしまった。
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