【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~
 舞踏会や晩餐会に行けば、注目されるのはエスターだけ。
 
 貴族たちは、こぞって姉を褒め称えた。

「エスター嬢は真面目で優秀、おまけに美人ときたもんだ。いやぁ、伯爵は素敵なお嬢さんを持ちましたなぁ」

「女学院では生徒会長も務めたとか。学業の(かたわ)ら、孤児院で慈善活動もしてらっしゃるのでしょう? まさに、貴族令嬢の鏡だわ」

 容姿端麗な才女と呼び声高い姉。対してあたしに向けられるのは、ただの無関心。

 皆、あたしのことを「エスター嬢の妹さん」と呼ぶ。

 名前もろくに覚えてもらえず、姉との比較対象ですらない。居なくても誰も気付かない、まるで透明人間にでもなった気分だった。

(なによ、あたしは主人公なのよ)
 
 エスターが小説どおりの最低ないじめっ子だったら、悪事を暴いて「ざまぁ」できたのに。なぜか姉は原作とは違って、面倒見の良いお人好しだった。

 それが、あたしをより苛つかせる。
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