【コミカライズ】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~

出会い

 エスター・ロザノワール伯爵令嬢の訃報から一年。

 季節は一巡し、アストレア王国に再び春が訪れた。

 若葉が芽吹く小高い丘の上に、無数の墓石が並ぶ。私は立ち止まり花を手向けた。
 
 墓標に刻まれた名は――エスター・ロザノワール。
 
 ここは、私の墓だ。

(自分のお墓を見下ろすなんて、まるで幽霊になった気分ね)

 春風に揺れる髪は、本来の赤毛から淡い栗色に。
 顔は天使のごとく可憐な美貌へ。

 共和国での施術とケアを受けた私は、エスター・ロザノワールからアデル・シレーネへと変身を遂げた。
 
 エスターとアデルの生死逆転の事実を知っているのは、シレーネ夫妻と共和国の医師。そして私を療養所から救い出してくれた、シレーネ家お抱えの工作員ソニアだけだ。

 この先私は、アデルとして生きていく。


(アデル、ありがとう。私、絶対幸せになるから、見ていてね)
 

 心の中で今は亡き親友に誓うと、丘に爽やかな風が吹いた。『エスター、頑張ってね』と言うアデルの声が、聞こえたような気がした。
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