【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~
「お迎えが遅くなり、申し訳ございません。シリウス殿下から『シレーネ令嬢と話がしたい』と言われ、近くで待機しておりました。お顔の色が優れないようですが、あの方に何か言われましたか」

「ええ、少し。気になることがあるの。シリウス殿下について情報収集をお願いしてもいいかしら? 幼少期から現在までの生い立ち、交友関係、王宮内や騎士団での立ち位置。なるべく多くの事柄について知りたいわ」

「かしこまりました」

「ありがとう。お願いね」

 そう言って私は背もたれに身を預け、目を閉じた。

 何度振り払おうとしても、脳裏に彼の顔がちらついてしまう。

(シリウス・イヴァン・アストレア……)

 私が彼について知っていることといえば、冷静沈着で自他共に厳しい性格だということ。

 異能力はないが文武に秀でており、数年前から騎士団の大隊を束ねる立場にある、という最低限の知識。

 あとは、このまま小説どおりに事が進めば、数ヶ月後に第一王子とミーティアを殺害しようとして失敗し、王都の広場でギロチン刑に処される未来だけ。


 それなのに。


 ――『彼女の死の真相を知りたいんだ』

 なぜあなたは、私の死について知ろうとするの?
 
 私達、ほとんど接点もなかったのに。
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