【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~
 ミーティアの両親は相当な野心家だった。俺との縁談をうやむやにしつつ、メイナードとミーティアを引き合わせた。

 メイナードは、自分の病を癒したミーティアを『聖女』とあがめて溺愛。異例の早さで婚約を決めた。


(要するに俺は、殿下の恋心に火を付ける当て馬として、まんまと利用されたわけだ……クソが)

 
 当然、俺の父・カルミア侯爵は憤慨(ふんがい)した。

『我が家との縁談を断るのであれば、姉の異能を盗んだという不名誉な事実を公表するぞ』とミーティアの両親を脅したのだ。

 『聖女』の清純なイメージを壊されてはたまらない、とミーティアの両親は酷くうろたえた。
 

 そこで、両家の間で秘密裏の交渉が行われた。
 

 我がカルミア侯爵家は、ミーティアの秘密を決して口外しない。

 そのかわり、我が家が円卓会議の一員になれるよう、ミーティアがメイナードに口添えすること。

 
 これが取引の内容だった。

 
 円卓会議とは、王と12人の選ばれし貴族諸侯で構成される、国の最重要決定会議だ。
 
 税率の改正や他国との開戦決定、法改正など、国のゆくすえに関わる重要事項はすべて円卓会議にかけられる。

 円卓に座ることは、王族に次ぐ権力を得るのと同義だった。
 
 メイナードはミーティアの頼みを快諾し、うちは晴れて円卓の一員に。

 父は『大出世だ!』と喜び、俺は若くして貴族議員席に座ることとなった。
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