【コミカライズ配信中・書籍化決定】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~
 公務のない週末、殿下はお忍びで孤児院や下町に足を運び、視察をかねた慈善活動をしている。いわく「良い(まつりごと)をするには、民の暮らしを知る必要がある」という理由らしい。
 
 
 この孤児院にも訪れており、子ども達からは……というか、主に女子に絶大な人気がある。

 この子たちも、まさか『お兄さん』がこの国の王子さまだとは考えもしないだろう。

 私は「そうねぇ」と答えた。

「お忙しい方だから、今日は来られないかもしれないわね」

「そんなぁ」

「はーん、あんなヤツがすきとか。オマエ、おとこのシュミわりぃな!」

 王子さまの不在を嘆く女の子を、泥だらけの少年が馬鹿にする。
 案の上、少女は「はぁ!?」と怒りの声をあげた。

「アンタみたいな汚いヤツに言われたくないわよ!」

「きたなくねぇよ!」

「汚いわよ!」

「うっせ、バーカバーカ!おまえなんか、だいっきらいだ!」

 少女がひぐっと涙声をこぼし顔を歪める。それを見た少年が、はっとして固まった。
 
 
「ほらほら、喧嘩しないの」
 
 
 さすがにこれはマズイと思い、間に入って二人をなだめる。私は少年に目線を合わせ、問いかけた。
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