ビールで乾杯
 いっそのこと別れて、新しい出会いを探そうか……。
 実のところ、真理はそこまで思い詰めていた。
 そう考えるのは、最近親友の山田(やまだ)美幸(みゆき)が結婚したからだ。美幸は真理と同じように長く付き合っていた彼氏に見切りを付けて、その後出会った人と数ヶ月でスピード結婚した。
 先月、結婚式にも呼ばれた。
 相手は教師をしている真面目で温厚そうな素敵な人で、ウェディングドレスを着て微笑む美幸からは幸せオーラが溢れていた。
 やはり年月ではないのかもしれない。勢いは大事だと思う。あとは、きっかけ。
 子供でも授かれば……なんて考えたこともあった。

 数ヶ月前に佑都から「一緒に住まないか」と言われたのだが、同棲なんて始めてしまうと、それこそ婚期を逃してしまいそうだと思った真理は、「考えておく」と軽く流した。
 たかが紙切れ一枚のことだけれど、真理はその紙切れにどうしても拘ってしまうのだった。けれど、結婚を匂わせるようなことは今までしたことはなかった。プレッシャーを与えるのは良くないと聞くからだ。
 ならば、一体いつまで待てばいいのだろう……。
 真理の悩みは深刻だった。
 周囲からの結婚プレッシャーに、押し潰されそうになっていた。

 子供を望む真理にとっては、産休育休を経て職場復帰するにしても、退職して落ち着いた頃に別の仕事を探すにしても、年齢や体力的なことを考えると悠長なことは言っていられなかった。望めば授かるなんて簡単な問題ではないと聞くし、妊娠にも適齢期があると思う。
 佑都に結婚の意志がないのならば、そろそろ見切りを付けなければいけないだろう、と真理は考えはじめていた。
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