麻衣ロード、そのイカレた軌跡❺/二つの情念、炎上す
その16
麻衣



「あれ?祥子、そろそろ時間じゃないのか?」

「おー、そうだったわ。じゃあ、トイレ行って着替え済ませてくるわ…」

はは、祥子め…

一応、リクルートファッションを心得てるみたいだな(笑)

「ねえ、麻衣さん…。何よ、祥子…、これからお葬式でもあるの?」

ハハハ…

真樹子さんもいいねえ、その感覚

「ふふ…、あいつが出て来たら聞いてやって下さいよ。どこお出かけ?ってさ」


「…」


...



やがて祥子が着替えを済ませて、トイレから出てきた

はー?

「おい、お前…、地味な格好はいいけど、妙につんつるてんじゃん。サイズ合ってねえよ、それ。アハハハ…」

「ああ、これ、妹のなんだよ。うっかりして用意するの忘れててさ。まあ地味ならいいだろ、ブカブカよりは」

「ちょっと、祥子、どこ行くのよ。そんな似合わないカッコしてからに。仮装パーティーか?」

「あん?」

祥子は顔をクシャらせてるって、ハハハ…


...



「真樹子さん、祥子はこれから転校手続きなんですよ。埼玉高への」

「ああ、そうか…!おめでとう、祥子」

「は…?めでたくないっての、そんなの。かったるいけど、ここでチョンされるわけいかないからさ。おとなしく手続きだわ。なあ、麻衣…」

「ああ、そうだ。なにしろ、そのつんつるてん、人に笑われても我慢するんだぞ。けっしてケンカはするなよ、今日だけはな。一応、人を介しての転入なんだから…。行儀よくだぞ」

「ああ、わかってるよ。じゃあ、行ってくるわ。みんな、お先に…」

「祥子、頑張れ!絶対、暴れちゃダメよ」

「行ってらっしゃい、祥子さんー」

リエと久美は笑顔いっぱいで祥子をお見送りだ

そしてダブリの高校1年生、”大女”津波祥子はヒールズを後にした…


...



「お邪魔しますー」

祥子とほぼ入れ違いで、やや太った若い男が店のドアを開けて入ってきた

「あのう…、倉橋の親父さんから”これ”、麻衣お嬢さんにって預かってきたんですけど…」

ちょうどリエがカラオケで熱唱中だったが、若い男のその声はでかかったので、奥にいた私たちにも聞き取れたわ

「あー、ご苦労様。久美、受け取ってきてくれるか?」

「…ああ、うん」

久美は入り口に小走りして行ったよ

「倉橋さんからって…、何なの?麻衣さん…」

「剣崎さんに頼んでたもんです。へへ、興信所の調査結果みたいなもんですよ」

「なるほど、そういう類ね…。うん?あの使いの人、見覚えあるかな…」

「…」

私たち二人は、店の入り口での久美と”男”のやり取りに視線を送っていた…







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