麻衣ロード、そのイカレた軌跡❺/二つの情念、炎上す
その3
ケイコ



これは…

完全に分断されてる!

ここにいる南玉の人達、連日の矢継ぎ早な攻勢にもはや顔面蒼白だよ

ヤツらの掌に乗っかっちゃってるわ…

こうも後手後手じゃ、連中と戦う前に自滅しちゃうって

クソー、ここで踏ん張らなきゃ!


...


「多美、もう時間がない。私を火の玉川原まで乗っけてって」

「ああ、だけど…」

「二人で時間ぎりぎりまで待とう。それまでには南玉の方針が決してるだろうし、とにかく誰かが時間までに本郷に挑まなきゃ、ヤツらへ屈したことになっちゃうよ!」

「わかった。恵川先輩、そういうことなんで、私ら二人は行きます!」

「ああ…、こっちも真澄先輩と話ができ次第、方針固める。頼むぞ!」

「はい!」

既に、時計の針は6時15分を指していた


...


多美のバイクに乗って5、6分走ると、対向車線ですれ違った原付がクラクションを鳴らしてきたよ

それに気づいた多美は、歩道脇にバイクを止めた

「南玉の1年、久保原昌美だわ」

「多美―!」

「おお、クッキー、アンタ偵察だったっけ?」

「うん。墨東会の積田さんと岩本の会談場所に詰めてたんだ。現場からは一報入れたけど、奴ら、墨東には相和会を当ててきたよ!」

「やっぱりか!」

多美は大声でもう怒鳴ってた

「おけい、こんなのって…」

「…久保原さん、積田さんは岩本の要求になんて答えたの?」

「岩本の要求には全面的拒否してくれてね。そしたら…、店の中に相和会の人間が数人入ってきて…」

「暴力振るってきたのか?」

「ううん。積田さんには手を出さなかったようだよ。ただ、すでに隊列を組んでいた高本さんには別の連中を繰り出したって言ってた。積田さん、その場から高本さんらが集合してる現場に向かったわ」

まさに、本郷はすべてにおいて手を打っていたんだ

同時布告はその一斉行動も並行していたのか…

このままじゃ、こっちはなし崩しになるって!






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