彼は溺愛モンスター
最近、サチカと目を合わせられない。

サチカは何も悪くないのに。
サチカはいつも通り「おはよ」って言ってくれるのに。

私が勝手に気まずくなって、目を逸らしているだけだ。
よくない。よくないって、ちゃんとわかってる。

だけど、無理だよ……。今まで通りなんて、無理……。

『親友と好きな人がかぶった』

漫画じゃよくある話だ。

でも、実際こんなつらいことだなんて思わなかった。思ってなかった。

頭ではわかってるんだけど、心が追いついてくれないんだ––––。

気まずい私たちを楓くんを始め、クラスメイトたちが心配していた。

昼休み。
初めは様子を見ているだけだった楓くんが、動き始めた。
話しかけたんだ。

……サチカに。

なんで? どうして、私じゃないの?

ますます不安はつのるばかり。

じゃあ、楓くんは、私じゃなくてサチカのことが好きって言いたいの?

心の中で、楓くんをせめてしまう。

ああ、ダメッ。なんでせめちゃうの……。楓くんは、

        悪くないのに。

心が真っ暗だ。
楓くんは悪くない。サチカの方が私より可愛くて素直で素敵な子だ。選ぶ人を間違ってなんかない。
それに、楓くんの好きな人を決める権利は、楓くんにある。私が決めていいことではない。
私だって、大好きな二人の恋、応援したいよ。したいけど……っ。

私は頭をかかえる。

ねぇ、サチカ、楓くん。私は、私は、私は。

––––私は、どうしたらいいのかな。

*その頃、二人は*
楓がサチカに話しかける。
サチカは嬉しそうに笑って、二人は教室を出た。
二人きりで、放課後、会う約束をする。

––––ここまでは順調だった。

サチカの思惑通りだった。
そして、サチカはここで楓を誘惑する。そして、楓は“おちる”……はずだった。

恋愛だもん。仕方ないよ。順調なんて、ないよね。

サチカは言い聞かせた。

が、心の傷は癒えなかった。

楓は自分のことなんて見ていなかったから。

ああっ、悔しいっ!!

楓に言われたのはこう。

『最近、イヨちゃん元気ないよね。なんでか知ってる? また笑わせたいから協力してよ』
『……まさか、お前が傷つけた、なんてないよなァ?』

『ヒィッ、違いますっ! 笑顔にさせたいですっ!』

自然とこう言う返事になった。

だって、怖すぎるし!

普段、楓はおっとりしてるが、イヨのことになるとヤンk……ゴホン、ヤクz……ゴホッ、ゴホッ、しょ、少々乱暴になってしまうのだ。



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