キミと放送室。
3





お昼休み。

今日は音楽を流し始めて5分経っても名波先輩が現れない。


お休みなのかもしれない、と一応廊下をチェックしたけれど、誰も来る気配はない。


私はいつもは入らないスタジオ部屋に足を踏み入れた。

「おじゃましまーす…」


名波先輩が陣取って寝ている時は入れないけれど、ずっと気になっていた物がある。





壁際に置いてあった音が鳴るのか分からないアコースティックギターを手に取り名波先輩がいつも寝ているソファにゆっくり腰掛けると、見かけによらずフカフカだった。





ギターの弦を指で弾くと、ポロロロンと音が鳴った。

「わぁ、鳴るんだ」

と、ついつい独り言が口から出る。


ご丁寧に一緒に置いてあった“初心者入門”と書かれた教則本をパラパラとめくり、その通りにやってみるけれど、さっき適当に弾いた時は音として一応響いたけれど、今度はそうはいかない。



「ん?」


もう一度やってみるけれど、結果は同じだった。



太めの弦はブンと揺れるだけで、かろうじて細めの弦がプーンと音が響いた。


「難しい…」




何度か繰り返していると、「楽しそうだね」と、笑いを堪えるようにパーカーの襟元で鼻まで隠した名波先輩が立っていた。


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