キミと放送室。



「栞ちゃん、有島と朝何の話ししてたのー?」


3限目が終わって、次の化学の授業のために理科室へ向かう途中、紗良が楽しそうに聞いてきた。


「有島?そっか、席替えしてから栞と隣の席だもんね」

千春が思い出したようにそう言った。

紗良はワクワクと期待の眼差しで私の答えを待っている様子だ。


「べ、別に大した話はしてないよ」


何となく知られたくなくてそう答えた。


「えーほんとー?内緒話してたのにー」


紗良がつまらなさそうに口を尖らせたのを見て「面白がるんじゃない」と千春がつっこむ。



私は愛想笑いをして少し早歩きで歩いた。



放送委員に入ったのは、お昼休みは1人で過ごしたいと思ったからだ。


2人のことは好きだけど、やっぱりどこか劣等感を感じているのかもしれない。





私が有島くんに憧れていることも、2人は知らない。



「もうすぐチャイム鳴るよ、早く行こ」

私は2人にそう言って小走りで理科室へ向かった。

「本当だ、やば」

千春は全速力で走り出し、紗良は「バイバーイ」と呑気に手を振った。









< 8 / 53 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop