PTSD
第三章 トラウマ
 朝食を終え、
メリーアンを学校へと送り出したローズは、
のんびりと食器の片付けを始めた。

(相変らず朝から元気だ)


先程の、
賑やかな食事のシーンを思いだし、
ローズは気分がよかった。


いい子。



 一区切りすると、
続けて洗濯をし。

洗い上がると同時に、庭に干しに出た。


 ゆっくりと、
丁寧に干していった。


 ふとメリーアンの
行って来ますと、振り返った顔が思い浮かんだ。


(いつの間にあんなに、
成長し。
陽気におどけて私を、
笑わせてくれるようになった。)


 そして次に、
大きいはずのメリーアンが
ローズの中でだんだんと、
小さくなり。


泣き顔へと変わった。


「行かないで!」



私が戦地へと出向くとき。
いくら、お仕事なのよと言っても、
泣いてかならず後追いをした。


(職務なんて、
説明したところで解る訳もないわ。)


 なのに、
そんな事を何回か重ねるうち、
いつからか。
笑って、「行ってらっしゃい」と、
素直に手を振り。
送り出すように、なった。
私は正直ほっとした。


(あんなにまだ小さな
子供なのに…)


 笑った顔のメリーアンが
戦場で笑う、少年の顔になる。


にこりと笑いかける少年に気付き、
笑い返したローズに、
ふいに銃口を向ける少年。


ローズはとっさに
あるべき行動を、
とった。



 倒れた少年に近づき
地面に流れ出る血を、
膝まづき
両手で堰止めようと、ローズは慌てた…


「あああーーっ」


ローズはその時とおなじ、
天を仰ぎ
叫んだ。
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