新そよ風に乗って ⑤ 〜慈愛〜
「でも、中原さんがもうすぐ戻られますよ?」
「いいんだよ。中原は、どーでも」
そんな……。
「中原が、どうしたって? 鴨志田」
会計の席に着いてしまい、座ろうかどうしようか迷っていると、座っている折原さんが鴨志田さんの顔を覗き込むように声を掛けた。
「あっ……。折原さんが、何故此処に……」
折原さんの姿を見ると、鴨志田さんの顔が一瞬、引きつったように見えた。
「中原とチェンジしてもらったの。鴨志田の席は、あっち。此処は、会計の席。分かったなら、とっとと主計の席に戻って大人しく中原とビンゴゲームに参加しなさい。鴨志田、ハウス!」
「はい。戻ります」
そう言って鴨志田さんは敬礼をすると、主計の席に急いで戻っていった。
「まったく、本当に酒癖悪いんだから。矢島ちゃん。何もされてない? 大丈夫?」
「はい。何も」
「弱い癖に、酒に呑まれるんだよね。自分の限界、まだ掴めてないんだから」
そうなんだ。鴨志田さんって、そういう人なんだ。
「まあ、最も中原がだいたい一緒だから安心なんだけどさ。彼奴は、しっかりしてるしね」
そんな話をしていると、トイレから戻ってきた中原さんが急いで席に戻っていく姿が見えた。
「さて、それではただ今より、ビンゴゲームを始めます。各テーブルに係が今シートをお配りしていますので、配り終わりましたら直ぐに始めますから皆さん、準備をしておいて下さい」
各テーブルにシートを配り終えると、係の人の合図でビンゴゲームが始まった。
これ、ドキドキするけど好き。
「毎年、結構いい商品が当たるから頑張るぞ」
折原さんも、気合いが入っている。
ふと、高橋さんの席の方を見ると、告げられた番号を確認して欲しいといった体で、美奈という人が高橋さんに甘えるように近づいている姿が見えた。
「あーん。はずれてるぅ。キャーッ! ずるーい、高橋さん。もう2つも開いてるぅ」
出納の席の人達と楽しそうに会話をしている高橋さんを見ていたら、どんどん複雑な気持ちになってしまうので、もう見ないように聞こえないようにビンゴゲームのアナウンスに集中した。
「4番。4番ですよー。いいですか? 4番です。次あたり、そろそろビンゴが出そうですかー?」
進行役の人の声も、だんだんエキサイトして一段と大きな声になっている。
惜しいな。バラバラに開いてしまっていて、全然リーチにならない。
「高橋さん? どちらに行かれるんですか?」
「……」
不意に聞こえた声に顔を上げると、高橋さんが席を立って会計の席に近づいて来ていた。
「これ、一緒にやっておいてくれ」
「えっ? あの……」
高橋さんは、ビンゴのシートを私のシートの横に並べて置くと、そのまま行ってしまった。
高橋さん。何処に行くの?
慌てて振り返ったが、高橋さんはドアを開けて会場を出て行こうとしているところだった。
「いいんだよ。中原は、どーでも」
そんな……。
「中原が、どうしたって? 鴨志田」
会計の席に着いてしまい、座ろうかどうしようか迷っていると、座っている折原さんが鴨志田さんの顔を覗き込むように声を掛けた。
「あっ……。折原さんが、何故此処に……」
折原さんの姿を見ると、鴨志田さんの顔が一瞬、引きつったように見えた。
「中原とチェンジしてもらったの。鴨志田の席は、あっち。此処は、会計の席。分かったなら、とっとと主計の席に戻って大人しく中原とビンゴゲームに参加しなさい。鴨志田、ハウス!」
「はい。戻ります」
そう言って鴨志田さんは敬礼をすると、主計の席に急いで戻っていった。
「まったく、本当に酒癖悪いんだから。矢島ちゃん。何もされてない? 大丈夫?」
「はい。何も」
「弱い癖に、酒に呑まれるんだよね。自分の限界、まだ掴めてないんだから」
そうなんだ。鴨志田さんって、そういう人なんだ。
「まあ、最も中原がだいたい一緒だから安心なんだけどさ。彼奴は、しっかりしてるしね」
そんな話をしていると、トイレから戻ってきた中原さんが急いで席に戻っていく姿が見えた。
「さて、それではただ今より、ビンゴゲームを始めます。各テーブルに係が今シートをお配りしていますので、配り終わりましたら直ぐに始めますから皆さん、準備をしておいて下さい」
各テーブルにシートを配り終えると、係の人の合図でビンゴゲームが始まった。
これ、ドキドキするけど好き。
「毎年、結構いい商品が当たるから頑張るぞ」
折原さんも、気合いが入っている。
ふと、高橋さんの席の方を見ると、告げられた番号を確認して欲しいといった体で、美奈という人が高橋さんに甘えるように近づいている姿が見えた。
「あーん。はずれてるぅ。キャーッ! ずるーい、高橋さん。もう2つも開いてるぅ」
出納の席の人達と楽しそうに会話をしている高橋さんを見ていたら、どんどん複雑な気持ちになってしまうので、もう見ないように聞こえないようにビンゴゲームのアナウンスに集中した。
「4番。4番ですよー。いいですか? 4番です。次あたり、そろそろビンゴが出そうですかー?」
進行役の人の声も、だんだんエキサイトして一段と大きな声になっている。
惜しいな。バラバラに開いてしまっていて、全然リーチにならない。
「高橋さん? どちらに行かれるんですか?」
「……」
不意に聞こえた声に顔を上げると、高橋さんが席を立って会計の席に近づいて来ていた。
「これ、一緒にやっておいてくれ」
「えっ? あの……」
高橋さんは、ビンゴのシートを私のシートの横に並べて置くと、そのまま行ってしまった。
高橋さん。何処に行くの?
慌てて振り返ったが、高橋さんはドアを開けて会場を出て行こうとしているところだった。