新そよ風に乗って ⑤ 〜慈愛〜
折原さんは、きっとまだまだ飲み足りないだろうし、他の人達とも話しもしたいんじゃないだろうか。私が居たら気を遣わせてしまうと思うし、此処にこのまま居ても何となく高橋さんの行動を見届けなければいけないような気がする。
「折原さん。私、お部屋に……」
「矢島さん。一緒に飲まなーい?」
はい?
見ると、先ほどより更に酔っている感じの鴨志田さんが、グラス片手に隣に立って居た。
「鴨志田。本当に酒癖悪いわ」
折原さんが、独り言のように言っている。
「此処、座ってもいい?」
鴨志田さんは、隣の椅子を引き出して座ろうとした。
「強制退去。中原。鴨志田を部屋まで連れて行って。煩くてしょうがない」
「すみません。止めたんですけど、飲んじゃって」
「俺は、まだ部屋には戻りませんよ? 矢島さんと、これから飲むんですから。ね?」
そう言うと、鴨志田さんは中原さんの手を振り切って隣の椅子に座ろうとした。
そんな……困る。
「何でですか? 高橋さん。それじゃ、約束が違うじゃないですか!」
エッ……。
突然、大声で美奈という人が高橋さんの名前を呼ぶ声が聞こえた。
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