天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う
* * *

あくる日の午後、手術を終えた彗は理事長室に呼ばれた。

三十畳ほどの広々とした部屋は南側のブラインドを上げた窓から陽の光が降り注ぎ、ミディアムブラウンで統一されたカラーコーディネートは重厚感や上質さが緊張感を持って執務に挑める空間を作り出している。

部屋の隅には祖父の代にはなかった大きな観葉植物が置かれていて、訪れた人に威圧感を与えない雰囲気があった。

執務デスクから応接用ソファへ移動した多恵は彗にも腰を下ろすよう促す。

「羽海さんをお預かりしてもう一週間経つわ。どう? 素敵な子でしょう?」

話の前置き程度に手術の成功を労うと、羽海との同居の様子を聞きたがり、彼女がどれだけ彗の嫁に相応しいのかと説いた。

「まさか貴美子さんのお孫さんだとは思わなかったけど、あの気立てのよさなら納得だわ。仕事ぶりも丁寧だし、患者さんにも評判がいいのよ。若いのによく気がつくって」

自分にも他人にも厳しい多恵は、あまり人を褒めることがない。

その彼女が絶賛するのだから彗が心惹かれるのも道理だと、羽海の顔を脳裏に思い浮かべる。

彼女と同じ職場だと知ると、これまでは気にも止めなかった清掃員のピンク色の作業着が視界に入るようになった。

今日の午前中も病棟の廊下をモップで掃除している羽海を見つけ、背後から近付いた。

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