天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う
「……もしかして、初めてか?」
羽海の様子を見て察した彗が尋ねた。
嘘をついても仕方がないので、正直にこくりと頷くと、彼ははっと短く息を吐き、こつんと額を合わせて羽海に覆いかぶさってくる。
「優しくする」
たったひと言、それだけで僅かながらあった恐怖心は消え去り、ただおかしいくらいに胸が高鳴っていて、心臓が壊れてしまいそうなほど鼓動が速いリズムを刻んでいた。
肌をかすめる彗の手は大きくて、時折こちらを窺うように向けられる視線と同じくらい熱い。
「あ……」
真面目で優等生な羽海にとって、交際していない男女がキスをしてベッドになだれ込むなど、こんな不誠実でふしだらなことはない。
それなのに拒絶するどころか、気遣うように優しく触れる手や唇に翻弄され、心の奥底に芽生え始めた感情を見て見ぬふりをして、自ら彼に縋り抱きついていた。
恋人同士ではないのだから甘い言葉はないけれど、全身が蕩けそうになるほどの熱と、普段の俺様で強引な彗はどこへ行ったのかと思うほどの優しさと思いやりを感じる。