またキミに会うために~1400年の時を超えて~
「患うふりを辞めるのは、諦めたからではない」

「……皇子」

「私の病をも治したこの湯を勧めることで、敵意がないことを少しでも示せればよいと思っておる。斉明大王は今、孫を亡くされ消沈しておられるのも確か。この湯が癒してくれるであろう」

 そう明るく笑う皇子を、私はぎゅっと抱きしめた。

 __大丈夫。そんな無責任な言葉は言えない。

 だからせめて、この熱が伝わるように。皇子は、一人じゃない。

「……温かいな」

 そう言って、抱きしめ返してくれる腕の強さに安心する。

 大丈夫。大丈夫。まるで自分自身に言い聞かせるように、私は何度も心の中で繰り返した。
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