私のボディーガード君
それから一頻り泣いた後、三田村君はもう一つ謝る事がありますと、素性を話さなかった事を謝った。

三田村君のお母さんは後妻で、三田村君を三友グループの後継者にしたかったそう。でも、三田村君は自分よりも、母親違いの兄、成海さんに継いで欲しいと思った事、三田村家と決別する決意で警察官になり、家を出た事を打ち明けてくれた。

「だから俺は三友グループとは関係ないと思って来ました。神宮寺綾子さんとの婚約も家を出た時に解消になったと思っていましたが、綾子さんは違ったようで、俺がSPをしている事にあまりいい顔をしませんでした。それで辞めるように言われ続けましたが、俺は綾子さんに何度も婚約は解消したから俺に構わないで欲しいと頼みました。しかし」

三田村君がはっと低いため息をついた。

「ある日突然、警備部警護課から、総務部広報課へ異動になったんです。自分が希望した事ではありませんでした。調べてみると神宮寺家が俺の人事に圧力をかけて来た事がわかりました。俺は許せなかった。しかし、いくら俺が頼んでも綾子さんは聞く耳を持たなかった。それ所か解消した婚約話は進んでいて、後で知った事ですが、母が俺を後継者にしたくて、勝手に進めていたんです。俺は親父に頭を下げました。綾子さんとは婚約できない。解消して欲しいと。それで警察を辞める事を交換条件に親父に動いてもらい、婚約を解消したんです」

悔しそうに眉を顰めた三田村君に胸が痛くなる。

「俺は自由になりたかった。自分の意志で人生を歩きたかったんです。御曹司と言われる事が苦痛で、だから妃奈子さんに話しませんでした」

三田村君の話を聞いていて、疑問が過る。

「でも、三田村君から綾子さんに連絡を取ったって」

ホテルで会った時、綾子さんは確かに三田村君から連絡を取ったと言っていた。

「それは、倉田浩介の事を調べてもらいたかったからで」

倉田浩介。その名前が出て来てドキリとした。

「倉田浩介は神宮寺製薬の社員だったんです。その事を知って綾子さんを利用しようとしました」
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