私のボディーガード君

倉田浩介

倉田浩介。

私を誘拐した男。この男の名前を聞くたびに、耳を塞ぎたくなるけど、三田村君の話を聞いて、もう逃げていてはいけないと思った。

警察を辞めてまで神宮寺綾子さんと婚約を解消したのに、三田村君がまた彼女と接触したのは、私のせいだ。

私が倉田浩介に狙われているせい。

これ以上、三田村君に迷惑をかけない為にも狙われている理由を知るべきだ。

どうして22年前に私が誘拐される事になったのか? なぜ今、私の命を狙うと母を脅しているのか? 母と倉田浩介の間に何があったのか?

ずっとこの疑問から目を逸らして、考えないようにしていたけど、それでは、いつまで経っても事件は解決しない気がする。

私も動かなきゃ。

ぐっと膝の上の拳に力を入れて、隣に座る三田村君を見た。

「三田村君、私、倉田浩介の事を知りたい」

夕陽に照らされた三田村君が驚いたように瞬きをする。

「私、ずっとあの誘拐事件から逃げて来たけど、今、三田村君の話を聞いて、知らなきゃいけないと思ったの。秋山さんに口止めされているのは知っているけど、倉田浩介の事を教えて欲しいの。お願い」

「……妃奈子さん」

黒い瞳が困ったように揺れた。
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