私のボディーガード君
「お願いします。三田村君」

頭を下げると、小さなため息が一つ聞こえた。

「妃奈子さん、頭を上げて下さい。もう妃奈子さんに隠し事をするつもりはありませんから」

優しく微笑んだ三田村君の顔を見てほっとした。

「俺もそんなに知らないのですが、倉田浩介は神宮寺製薬で『チャイルド』という小児ガンの抗がん剤の開発をしていたチームにいたようです。主任研究員という肩書だったそうで、そして、妃奈子さんを誘拐する直前に会社をクビになっています」

チャイルド……。

どこかで聞いた事がある。

あ、そうだ。

すぐ上の姉、リカちゃんから聞いたんだ。

リカちゃんの息子の優真(ゆうま)が小児ガンになって、その時、副作用が一番軽く、ガン抑制効果が高い『チャイルド』という抗がん剤を治療薬に勧められたと聞いた。でも、リカちゃんは『チャイルド』を選択しなかった。

確か、母に相談したら止められたと……。

お医者さんが勧める程のいい抗がん剤のはずなのに、なぜ母は止めたんだろう? もしかして、使ってはいけない理由があったとか?

「三田村君、『チャイルド』は本当にいい抗がん剤なのかな?」

三田村君が「え?」と、私を見る。

「実はね、私の甥が小児ガンになった時、『チャイルド』勧められたの。でも、母が『チャイルド』を使う事を止めたらしいの。それは、どうしてなんだろうって思って」
「佐伯大臣は『チャイルド』を使いたくなかったという事ですね?」
「うん。多分」
「使いたくなかった理由として考えられるのは、『チャイルド』に何か問題があると知っていたから……」

三田村君の言葉がピンと来た。

「あ! それだ!」

パンと右膝を叩いて、三田村君に人差し指を向けた。
三田村君が私の勢いに、驚いたように目を丸くする。
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