私のボディーガード君
「あの、マンションに送ってくれた時は私が佐伯洋子の娘である事は知らなかったんですよね? どうして私の名前を知っていたんですか? 大学で教えている事も」

 彼が「ああ」と口にし、瞳を細めてこっちを見る。
 キリッとした端整な顔にじっと見つめられて、ドキッ。

「覚えていませんか?」
「何を?」
「昔、あなたに会っているんですよ」

 会っているって、いつ? どこで?
 そう言えば、この間、見覚えがある気もしたのよね。

 うーん、どこで……。
 じっと彼を見ると、フッと口元を緩めて微笑んだ。笑顔が爽やかで胸がキュンとする。こんな素敵な笑顔を浮かべる人、印象に残るはずなのになんで思い出せないの。

「ごめんなさい。覚えていないです」
「お気になさらず。ほんの一瞬の出会いですから」

 一瞬の出会いってどういう事?

「あの、どこで会ったか教えて下さい」
 彼にそう言った時、部屋のドアが開いて、赤いスーツ姿の母が入って来た。
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