私のボディーガード君
「男性が苦手だとおっしゃっていたので」

 私が言った事を覚えていてくれたんだ。

「先週は失礼致しました。大臣のお嬢様とは知らず、お嬢様に不躾な振る舞いをしてしまいました。申し訳ございません」

 勢いよく頭を下げられてびっくり。
 そんなに深々と頭を下げなくていいのに。少しイラッとした事もあったけど、こっちも迷惑かけただろうし……。

「頭を上げて下さい。謝らなければいけないのは私の方です。いろいろとご面倒をおかけしてすみませんでした。あの夜は酔っていたのでほとんど覚えていなくて」

 頭を上げた彼がクスッと笑った。
 なんで笑う? 私、何かやらかした?

「あの夜は道路の真ん中に立たれていたので、保護させて頂きました」

 え! 私、道路の真ん中に立っていたの!

「ど、道路の真ん中に立ってたんですか」
「はい。それでバカヤローと叫んでおられました」

 恥ずかし過ぎる。なんて情けない所を見せてしまったんだろう。

「それでマンションまで送り届けてくれたんですか」
「放ってはおけなかったので」
「本当にすみません! ご迷惑をおかけしました!」

 穴があったら入りたい。
 初対面の人になんて所を見せてしまったんだろう。

 でも……。

 彼、私の事を佐伯洋子の娘だとはあの時は知らなかったのよね。どうして大学で教えている事を知っていたの?
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