夏恋サテライト
「あいつに同情しなくていい。俺がどうにかする」
「……やだ」
「…は?」
「棗と夏川さんが一緒にいるの、やだ。見たくない。別れたのとか、奪われたのとか、聞かれるのももうやだ」
涙ながらに棗の左手をぎゅっと握れば、再び涙が頬を伝う。
好奇の目で見られるのはもう限界だった。
夏目咲鈴は飛鷹棗にフラれたとか、転校生にあっさり乗り換えられたとか、酷い噂ばかり。
夏川さんのことだけじゃなく、棗のことまで悪く言われるのを耳を塞いで我慢するのは嫌だった。
でも言い返そうとしても、もっと悪化するからやめろって恭ちゃんに止められて。
いまはほとぼりが冷めるまで耐えろって、何度もこらえた。
「……ごめん、不安にさせて」
――ブーッ、ブーッ…
「……出ないの?」
「……いい」
テーブル上のスマホが鳴り、棗は相手の名前を見て画面をひっくり返す。
それだけで相手が誰か分かってしまうのが嫌だ。
…どうしてこんな時すら邪魔してくるの。