パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
「別にいいよ。
花夜乃さんにならいくらでも迷惑かけられたいし」

へらへらと彼は笑っているが、私としては大きな失態だ。

「そ、それで、昨晩は……」

シたのか、シていないのか。
上目遣いで彼をちらちらとうかがう。
あちらに酔わされ……とかだと訴えてもいい案件だが、私が勝手に酔っぱらった末のことなので、だとしたら自業自得だ。

「んー、教えてほしい?」

意味深に笑い、駒木さんが首を傾ける。
教えてほしいかといえば教えてほしいが、知らなければなかったことにできるんじゃないかとか考えている自分もいた。

「えっと……」

「どーだろうねー?
僕は君を抱いたのか、抱いていないのか」

なにが楽しいのか、彼はにこにこ笑っている。

「そんな意地悪しないで、教えてくれたらいいじゃないですか」

「んー、教えてほしいんだったらここに、サインして?」

「は?」

彼がテーブルの上に広げたのは、――婚姻届、だった。
しかもご丁寧にも妻の欄以外はすべて埋めてあり、私がサインさえすれば提出できるようになっていた。

「いや、だから、私は駒木さんと結婚しませんし」

私の前にあるそれを、乱雑に駒木さんのほうへと押し戻す。

「えー、昨日、結婚してくれるって言ったよ?」

こてん、と実に可愛らしく、彼が首を傾ける。

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