パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
まったくなにも理解できず、間抜けにも一音発してまじまじと彼の顔を見る。
彼はすでに私の手首を掴んで一歩踏み出していたが、私が着いてこないものだから怪訝そうに振り返った。

「どうしたの?」

その台詞、そっくりそのままお返ししたい。
私から返事がないからか、空いている手を軽く握って顎に当て、理由を考えているみたいなのはまあいい。
しかし、考えるまでもなくわかると思うんだけれど?

「……ああ」

私から手を離した彼が、ぽんと軽く手を打つ。
やっとわかってくれたのかと期待したものの。

「婚約指環がまだだから、拗ねてるんだ?」

「ちっがーう!」

秒で、しかも全力で否定した。
けれど彼はなにかを探しているのか、自分のスーツをぱたぱた叩いている。

「婚約指環は今すぐ準備できないから、代わりにこれでいい?」

と、彼が尻ポケットから出して手にしたのは――手錠だった。

「……え?」

なんでこの人、手錠なんか持っているの?
もしかして、危ない人?
気づかれないようにじりじりと後ろに下がり、私がダッシュして逃げるより先に彼の手が私の手首を掴む。

「はい、これでもう、僕のものだよね」

手錠が私の手首に触れた瞬間。
ピリリリッ、と携帯の着信音がすぐ近くから聞こえた。

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