パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
私の手を掴み、駒木さんは眼鏡の奥からじっと私を見つめている。

「名残惜しいが、今日はこれでお別れだ」

握っていた、私の手の指先に口付けを落とし、彼はようやく手を離した。
それを合図にするかのように、私も数歩、後ろに下がる。

「愛してる、マイ・エンジェル」

ドアが閉まり、走り去る車を呆然と見送った。

「なんか、こう……」

はぁっとため息をついた瞬間、周囲の音が戻ってくる。
どうして駒木さんはこう、くさい台詞や仕草をするんだろう。
そしてそれが様になっているから、なんとも言えない。

「ま、いっか……」

気を取り直して近くのカフェに入り、コーヒーとサンドイッチを買って適当な席に座る。
それにしても東本くんに会えたのは嬉しかったな。
彼とは高校生のとき、互いに淡い恋心のようなものを抱いていた。
ただ、ちょっとしたことで恋には発展しなかったが。
できるなら、一度ゆっくり話したい。
しかし、駒木さんに邪魔されそうだな……。



それからしばらくは、駒木さんは私の前に現れなかった。
仕事が忙しいのかもしれない。
それにちょっと淋しく感じているのは、ただ単にあれに慣れてしまったからだ。



「これでよしっ、と」

最後にエントリーボタンをクリックし、ほっと息をつく。
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