パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
「じゃ、僕はこれで。
仕事を抜け出してきたからきっと今頃、東本くんが凄ーく怒ってるよ。
噂をすれば、ほら」

携帯電話が鳴り、証明するかのように駒木さんがスーツを広げてみせる。
内ポケットから携帯を出し、彼はすぐに出た。

「はいはい、ごめんごめん。
ちょっと大事な用があったんだよ」

私に目配せし、駒木さんがひらひらと手を振って去っていく。
その背中に頭を下げた。

「うん、すぐ戻るから。
……どこって……わかるだろ?」

だんだんと駒木さんの姿も、声も小さくなっていく。
私のために東本くんに迷惑かけて、ちょっと悪かったな。
でも、わざわざ私を心配して持ってきてくれるなんて思わない。

「いい人だよね、たぶん」

こんな小さな防犯ブザーひとつで、駒木さんから守られている気になるのはなんでだろう?



ピリリッ、とマンションに帰り着いたのを見計らったかのように携帯が鳴る。
いや、会社を出るときにNYAINを送ったのでわかるか。

どうせ出るまで鳴らし続けられるのはわかっているので、焦らずに靴を脱いで部屋に入り、ソファーに座りながら携帯を取り出した。
相手は案の状の人物でつい、笑ってしまう。

「はいはい」

『お疲れ、花夜乃さん。
今日も無事に帰り着いたかい?』

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