パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
ちょっと心配そうな駒木さんの声が、携帯の向こうから聞こえてきた。

「はい、無事ですよ」

『本当に?
電車の中で痴漢になんか遭わなかったかい?』

心配全開の駒木さんはおかしいが、こうやって気遣ってくれるのは嬉しくもある。

「はい、電車でも帰り道でも、変な人には会いませんでしたよ」

『なら、いいが。
もしものときは渡してある非常ブザーを鳴らすんだよ?
わかったね?』

「はい、わかりました」

もらった非常ブザーは常に、バッグの内側にぶら下げてあった。
今のところ、使う機会はない。

『じゃあ、戸締まりに気をつけて。
愛してる、マイ・エンジェル』

リップ音を最後に、電話は切れた。
駒木さんは毎日、私が退社するときにNYAINを送らせ、帰り着いた頃に無事を確認する電話をかけてきた。
朝は会社着を確認する電話はないが、着いたとNYAINしないとかかってくる。
そういうのは最初、縛られているようで反発もあった。
しかし買い物やイベントで遅くなると言っても、飲み会で遅くなるでも、「楽しんでおいで」と快く……は、わからないが、行かせてくれる。
だからあれは本当に、私の通勤の危険を心配してくれているだけだと気づき、反対に嬉しくなった。

着替えて、夕食を作る。

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