意地悪警察官さんは、同担拒否で、甘々で。 ーワケアリ暴君様と同居していますー

第13話

〇夕方 大河とあいの部屋 リビング

どきどきしながら、大河の帰りを待っているあい。
ちらちらとスマホの時計の表示を見てしまう。

そうこうしているうちに、玄関ドアがガチャンと開く音が聞こえてとびあがるあい。
びっくりしてない、そんな顔をとりつくろって大河を待つ。

あい「じゃーーん! かえってきました! びっくりした?」

大河、あいの姿を見て一瞬目を見開くも、すぐにいつものニヤリとした笑みを浮かべて見せる。

大河「……ロウから聞いてるっての。……ほらよ。退院祝いと、あと戻ってきた? 祝いだ」

大河はあいに、ケーキ屋さんの箱を手渡す。

あい「ケーキだ! やったー! でも……せっかくびっくりさせようと思ったのに……」
大河「10年はええってとこだな。フォーク持ってくるから待ってろ」

ニコニコと、買ってもらったケーキを食べているあい。
大河は、それを眺めているだけだ。

あい「あれ? 大河さん食べないの?」
大河「……昼食いすぎたから一個丸ごとはいらねえんだよ……」

あい、何かを思いついたように目をきらきらさせる。それから少しにやにやしながら、ケーキを一口分フォークで切り取って大河にむかって差し出す。

あい「あーん」
大河「……ん」
あい(……うそ、ふざけるなって怒られると思ってたのに…)

大河は、大人しくあいが差し出した一口のケーキを食べていた。
くわえられたフォークから伝わる衝撃と、改めて近くで見つめた大河の顔の美しさに頭がぼーっとしかけるあい。

あい(……顔が近い、きれい……。まつげ長い……)

見惚れてしまうあい。じーっとフォークを掴んだまま見つめていると、大河が静かにあいを見つめ返してささやいた。

大河「……今回は本当に、すまなかった」
あい「大河さん……?」
大河「……オレのせいで、お前を危険にさらしたんだ」

頭をさげる大河に、思いっきり首を振って見せる。

あい「……謝らなきゃいけないのは、私の方だよ。大河さんは、ちゃんと行くなって叱ってくれたのに、……うまく受け止められなくて、ひどいこと言って……」
大河「……ガキがそんなの謝るんじゃねえよ。あんな言い方されりゃあ当然だ」

大河の表情は真剣で、そして優しい。だからこそ、あいに『ガキ』の一言が突き刺さる。
あい(……図星だから、それに年齢なんてどうにもならないから、……つらいんだな……)

あい「……ねえ大河さん、聞いて」

あい、緊張した面持ちで大河を見つめる。

あい「…………私ね、大河さんがすき」
大河「……………………ガキの言うことは信じねえよ」
あい「……ガキ、だって……わか、わかってるもん……!」

ぼろぼろ涙が止まらなくなってしまったあい。
大河は、そんなあいを優しく見つめてふっと息を吐いて笑ってから、抱きしめてくれる。

大河の大きな身体に包まれて、安心感を覚えるあい。

あい(……大河さん、……あったかい、……良い匂い……)

あいのぎゅっと閉じたまぶたから、涙の粒がぽろぽろとこぼれていく。

大河「……これから、だ。……これから、お前の世界は広くなるよ。……そもそもオレがまともかどうかは置いといて、もっといろんな相手と出会って、新しい世界を知って……。だから、告白とかすんのは、……まだ早い」

大河の腕があいの背中をあやすようにぽんぽんと撫でている。
その優しい仕草に対しても、子供扱いされている気持ちになってうまくうけとめられないあい。

あい「ちゃ……ちゃんと振るなら振ってください! 私……私見たから知ってるもん! 大河さんが……眼鏡の、すっごく綺麗なお姉さんと仲良しなの、知ってるから……!」

抱き着きながら喚くように言うあい。大河もあいを抱きしめ返したまま、その言葉を聞いて一瞬考えこむように眉を寄せる。
それから、ふっとその眉間のシワをほどいて、優しく言った。

大河「……あれは、ああ見えて……オレの乳母だよ」
あい「うば…?」
大河「……ようは……家庭教師みてえな人だ、オレは……阿部警備の跡取り息子なんだよ」

あい、想像もしていなかった言葉を言われてびっくりした顔をすることしかできない。

あい「跡取り息子…!?」
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