三年越しのあの日をもう一度
三月二十日、雨宮翔馬(あまみやしょうま)は何度もカレンダーの日付を確認する。そのたびに胸が高鳴り、緊張を覚えていった。

「いよいよ今日だね……。約束、覚えてくれてるかな?」

あの日から一度も忘れたことのなかった「約束」を頭の隅に置きながら、翔馬はパジャマから服に着替えてかばんを肩にかける。

「行ってきます」

一人暮らしのマンションの部屋を出る前、翔馬はそう言って扉を閉めた。



あの「約束」を翔馬がしたのは、三年前だった。自転車に乗って目的地まで向かいながら、翔馬はふと思い出す。

今日の「約束」をした人物、卯月美雪(うづきみゆき)と出会ったのは、高校の入学式だった。あの頃の翔馬は今よりずっと荒れていた。

「チッ!」

私立音海高校のグレーのブレザーを着た翔馬は、桜の木の下で舌打ちをする。そんな翔馬を同級生となった人たちは見ながらヒソヒソと話し、目の前を通り過ぎていく。何もかもに苛つき、翔馬は金髪に染めた髪をガシガシと掻きむしった。
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