振り解いて、世界
「毎日こんな感じなの?」
「まあ、大体」
「凄いね、朝からパーティーみたいだよ。うちだったら、ご飯と前日に残ったお味噌汁と漬物くらいだから」
「和食のほうがよかった?」
「そんなわけないじゃん、充分すぎるくらい美味しいよ!」
「それならよかった」
オムレツの美味しさに悶絶寸前になりながらセレンに微笑みかけると、セレンは決まりが悪そうにさらりと目を伏せた。
食事中にはしゃいで行儀が悪いと思われたのかもしれない。
軽く咳払いをして室内に視線を移した。
「それにしても、セレンの家って広いよね。家具だって、どれも豪華だし」
「ここは元々、おれの叔父が住んでたから家具もそのままなんだよ」
「じゃあ、ここには一時的に住まわせてもらってるんだ。叔父さんは今はどこにいるの?」
「スイス。叔母と楽しく暮らしてるよ。もう日本には帰らないから、おれがこのマンション自体を譲ってもらった感じ」
「え、セレンがこのマンションのオーナーなの?」
「そう」
「へぇ……」
都心近くの高台にある、高級住宅街の一等地に建つ五階建のマンションなんて一体いくらするんだろう。
そんな建物をポンと譲り受ける世界があるなんて信じられないし、想像もできない。
やっぱりセレンとは住む世界が違うなあと思いながら、ヨーグルトに入ったナッツをもぐもぐと噛み砕く。
「そろそろシャワー浴びて仕事に行くわ。食器もそのままでいいよ。後で片づけてもらうから」
「なにからなにまで悪いなあ。ごめんね、ありがとう」
「あとこれ、家の鍵も置いとく」
セレンはその場で立ち上がりながら、スウェットのポケットから鍵を出してテーブルにカチャリと置いた。
「わあ、なんだかこの鍵を持つのに責任感みたいなものを感じるよ」
「なんで?」
「だって、もしもわたしがこの鍵を落として泥棒にでも入られたら大変なことになるわけで……」
「あんま深く考えんなよ。でもまあ、落としたら後で色々と面倒くさいかな」
「気をつけるよ」
少し緊張しながら鍵を手に取る。
なんの特徴もない至って普通の鍵だけど、わたしには特別なものに見えた。
「そんなにめずらしい? いろ巴んち鍵ないの?」
「あるわ失礼か」
セレンは笑いながらマグカップを片づけ、リビングのドアに向かった。
こうやっていつもわたしをからかって、なにが面白いのか分からない。
でも、わたしをからかっている時が一番楽しそうに笑っているように見える。
気のせいかもしれないけど。
後ろからセレンの背中を眺めていると、セレンは思い出したようにくるりと振り返った。
「あ、シャワー、一緒に浴びる?」
「浴びない!」
「なんだ、昨日洗面所に入ってきたから一緒に入りたいのかと思った」
「ちが、そ、それは……セレンが中にいるって知らなくて……」
「慌ててる。図星?」
「もう! 早く仕事行きなよ!」
セレンは、けらけらと意地悪な笑い声を立てながらリビングを出て行った。
「まあ、大体」
「凄いね、朝からパーティーみたいだよ。うちだったら、ご飯と前日に残ったお味噌汁と漬物くらいだから」
「和食のほうがよかった?」
「そんなわけないじゃん、充分すぎるくらい美味しいよ!」
「それならよかった」
オムレツの美味しさに悶絶寸前になりながらセレンに微笑みかけると、セレンは決まりが悪そうにさらりと目を伏せた。
食事中にはしゃいで行儀が悪いと思われたのかもしれない。
軽く咳払いをして室内に視線を移した。
「それにしても、セレンの家って広いよね。家具だって、どれも豪華だし」
「ここは元々、おれの叔父が住んでたから家具もそのままなんだよ」
「じゃあ、ここには一時的に住まわせてもらってるんだ。叔父さんは今はどこにいるの?」
「スイス。叔母と楽しく暮らしてるよ。もう日本には帰らないから、おれがこのマンション自体を譲ってもらった感じ」
「え、セレンがこのマンションのオーナーなの?」
「そう」
「へぇ……」
都心近くの高台にある、高級住宅街の一等地に建つ五階建のマンションなんて一体いくらするんだろう。
そんな建物をポンと譲り受ける世界があるなんて信じられないし、想像もできない。
やっぱりセレンとは住む世界が違うなあと思いながら、ヨーグルトに入ったナッツをもぐもぐと噛み砕く。
「そろそろシャワー浴びて仕事に行くわ。食器もそのままでいいよ。後で片づけてもらうから」
「なにからなにまで悪いなあ。ごめんね、ありがとう」
「あとこれ、家の鍵も置いとく」
セレンはその場で立ち上がりながら、スウェットのポケットから鍵を出してテーブルにカチャリと置いた。
「わあ、なんだかこの鍵を持つのに責任感みたいなものを感じるよ」
「なんで?」
「だって、もしもわたしがこの鍵を落として泥棒にでも入られたら大変なことになるわけで……」
「あんま深く考えんなよ。でもまあ、落としたら後で色々と面倒くさいかな」
「気をつけるよ」
少し緊張しながら鍵を手に取る。
なんの特徴もない至って普通の鍵だけど、わたしには特別なものに見えた。
「そんなにめずらしい? いろ巴んち鍵ないの?」
「あるわ失礼か」
セレンは笑いながらマグカップを片づけ、リビングのドアに向かった。
こうやっていつもわたしをからかって、なにが面白いのか分からない。
でも、わたしをからかっている時が一番楽しそうに笑っているように見える。
気のせいかもしれないけど。
後ろからセレンの背中を眺めていると、セレンは思い出したようにくるりと振り返った。
「あ、シャワー、一緒に浴びる?」
「浴びない!」
「なんだ、昨日洗面所に入ってきたから一緒に入りたいのかと思った」
「ちが、そ、それは……セレンが中にいるって知らなくて……」
「慌ててる。図星?」
「もう! 早く仕事行きなよ!」
セレンは、けらけらと意地悪な笑い声を立てながらリビングを出て行った。