日替わりケーキとおしゃべりタイム

ふわふわ卵サンド

私は今、走ってはいけないとわかっている真っ白な長い廊下を、走るか走らないかギリギリの速歩きで進んでいる。

私のバカ。

どうしてもっとしつこく聞かなかったのだろう。

悔しくて、腹立たしくて、悲しくて、視界が涙でぼやける。

『大丈夫だって。心配性』

電話越しで笑い飛ばした直樹の言葉で、私は心配しすぎなだけならいいなと思い、それ以上は何も聞かなかった。

久々に18時に仕事が終わった私は、井上くんから残業があるという連絡を受けて、直樹のところに寄ることに決めた。

いつものように直樹の元に向かったけれど、明かりもついておらず、人の気配もなかった。

今日は、何か用事でもあったのかな…?

そう思って帰ろうとした時、

『飛鳥ちゃん?』

懐かしい声で呼ばれて、振り向くと直樹の妹の紗智ちゃんが制服姿で立っていた。

『紗智ちゃん、久しぶりだね。この前あったぶり。今日、直樹は用事あるのかな?』

そう尋ねると、私と紗智ちゃんの間に一瞬の間が空いた。

『…お兄ちゃんのこと聞いてないの?』

『えっ?』











紗智ちゃんに聞いた番号の書かれた部屋の前の扉に手をかける。

ガラッと扉をスライドさせると、個室のベットの上で、水色の入院服をまとった直樹が、本を読んでいた。


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