日替わりケーキとおしゃべりタイム
「あっ…随分着くの早かったね」

紗智ちゃんから、私が向かったのは聞いていたのだろう。

特に驚いた様子は見せず、私にいつものように眩しいくらいの笑顔を向ける直樹。

「もう、なんで教えてくれなかったの?電話した時だって、もうすでに入院してた時じゃないの」

2、3回やりとりしていたけれど、後半はすでにここにいたっていう事実に、自分が情けなくなる。

直樹が大変なのに、自分のくだらない相談しちゃってたし。

「ごめんって。飛鳥に余計な心配かけたくなかったんだって。それに、明後日に退院できるし」

「…でも…心臓でしょ?」

『心臓に炎症起きちゃったんだって。命に別状はないらしいけど…』

紗智ちゃんの言葉に、私の心臓の鼓動が一気に速くなり、急いでタクシーを拾って駆けつけた。

タクシーの中で、命に別状はないと聞いたものの、私は頭が真っ白で、タクシーの中での記憶がほとんどない。

「だから、本当に軽い炎症起きてただけなんだって。俺だってびっくりしたよ。風邪こじらせただけだって思ってたから」

直樹は、明るくそういうと、病室の小さな冷蔵庫から、ペットボトルのお茶を取り出して、私に渡した。

「驚かせてごめん。ゆっくりしていって」

こんな状況なのに、気を使う直樹の姿に、堪えていた涙が目からポロポロと溢れ落ちる。

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