幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました
最後の猶予
「どうぞ。お砂糖とミルクはご入り用ですか?」

 やはり格好に似つかわしくないファミレスのコーヒーカップとソーサーをふたつ持って、目暮はすぐ戻ってきた。

 カチン、と沙也の前に一組を置く。

 ふわっとホットコーヒーの良い香りが漂った。

「……ええ」

「ではこちらを」

 端的に返事をした沙也に、目暮は微笑で、持っていたらしきミルクのカップとスティックシュガーを差し出した。

 コーヒーカップのかたわらに置いてくる。

「……ありがとうございます」

 沙也はこの一連のことで、痺れていた思考がやっと少し動くようになってきた気になりながら、ひとまずスティックシュガーの袋を取り上げた。

 ピッと袋の端を破って、中身をさらさらとコーヒーに入れる。

 ミルクのカップも開けて、同じように注いだ。

 砂糖とミルクが入ったコーヒーは、真っ黒から、薄茶色に変わった。

 そこへスプーンを入れて、くるくるかき混ぜて、出来上がったコーヒーを持ち上げて、ひとくち飲む。
< 151 / 358 >

この作品をシェア

pagetop