カクテル

4.ブルドッグ(あなたを守りたい)


「ごめん君嶋くん、今日の約束キャンセルしていい?」

2週間ぶりに麻理さんと飲みに行く約束をしていたのに、夕方近くになって麻理さんは申し訳なさそうに僕に謝った。

「用事ができちゃって、また来週付き合うから許して」

どんな用事かは言わなかったけど深く詮索はできない、
まぁしょうがないか、「いいですよ、また来週行きましょう」


麻理さんにドタキャンされて急に時間が空いてしまった、週末の金曜日は皆んな遊びの予定を入れていて、今更他の人を誘う気にもなれなかった、
彼女も就活中で邪魔できないし、、

麻理さんに連れて行ってもらったバーにでも行こうか。

何週間ぶりだろう、マスターは僕の顔を覚えているだろうか、



入り口のドアを開けると照明を半分落とした店内に目が慣れず、一瞬立ち止まる。

"いらっしゃいませ"と
マスターの声がした方に目を向けると、
マスターは丁度テーブル席に飲み物を運んでいる最中だった。

軽く会釈して、
麻理さんの指定席であるカウンターの奥の席に座った。

やっぱり客商売の人は凄い、顔と名前を覚えるのが得意なのだろう。

「君嶋さんでしたね、今日はお一人で?」

「麻理さんと約束してたんですけど、急にキャンセルされてしまって、、」

「今日は金曜日でしたか、そういう事か、、」

そういう事って?
「マスターは何か知ってるんですか?」

「とりあえず、何を飲まれますか?」

「この前、頂いたやつお願いします」

マスターは手際良くカクテルを作ると、僕の前に出しながら、

「フローズンマルガリータです」と言う、

「えっ、この前のと違いますよね」

「はい、いろんなカクテルをお楽しみください、料金は安くしておきますので、これはいつも落ち込んでいるお客様に出すカクテルです。カクテル言葉は"元気を出して"です。」

マスターはカクテルが持つ言葉を使って、お客さんと会話ができるみたいだ。
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