私を包む,不器用で甘い溺愛。
「君だって噂程度にはあいつのこと,知ってるはずなのに……! 何だってあいつに良くしてやって,お昼まで!? そうさ,お昼? そんな質じゃないだろ,何を考えてるんだあいつ! 分からないから,近寄っちゃだめなんだよ,来栖さん! 何を企んでるか分かったもんじゃない!」



ちょっ,ちょっと待ってよ。

一体何の話をしているの?

何もそこまで必死に怒鳴らなくても……。



「……? ねぇ,甚平くん」

「あ……あぁ,ごめん。何? 来栖さん」

「榛名くんの噂って……なんなの?」



有名な榛名くん。

紗ちゃんと話している時の,少しの違和感。

戸惑いがちに溢れた質問に,甚平くんがそんなに驚くものだとは思わなかった。

目の前の大きく開かれた,信じられないと語る瞳に,私の方が不安になってくる。



「そんな……そんなことが……?! 分かったよ,君の鈍感さを,周囲への興味のなさを侮っていた。全部説明するから,どうか最後まで聞いてくれ」
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