私を包む,不器用で甘い溺愛。

紗side

         紗side


「すず,ちょっと話しあんだけど,いい?」



あら,坂本くんじゃない。

そんな真剣な顔しちゃって,珍しいこともあるものね。

でも



「ここでいいでしょ? 誤解されるのはごめんよ。それはお互いでしょうけど」

「……いいよ,ここで。来栖さんが来る前に済ませたいんだ」

「……へえ」



不敵にっと笑う。

初めてじっくりとよく見る,甚平というクラスメート。

顔は……確かにイケメン。

でも



「単刀直入に言うと,どうやら来栖さんはよりにもよって2年の三宅榛名なんかに騙されてる様なんだ」



こんな真っ直ぐな男,私の好みでもきっと有栖の好みでもないわ。

少し屈折してるくらいが丁度いいの。



「すずだって知ってるだろ,その榛名だ。名前と違って何にも可愛くない,その最悪な榛名。どうも本人も自覚する通り,少し他とズレている可愛らしい所を利用されたらしい」



……いいえ,前言撤回。

そう,寧ろ,屈折しまくって,全てを善に変えてきた男だからこその今なのね。

聞き流していたはずの言葉が耳を通り,私ははぁとため息をついた。



「だからすず……」



こんなにイラッとしたのは久しぶりだわ。
< 52 / 119 >

この作品をシェア

pagetop