捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
 これ以上考えていてもしかたない。とりあえず、食べていくぐらい稼ぐことができるのは、事前に確認済みだし。
 玄関から出てもいいのだが、それだと誰かに見つかるかもしれない。
「……フェオン、お願い!」
 口にするのと当時に、イオレッタは三階の窓から飛び出した。普通なら、命を落としかねない危険な行為だ。
「ワカッター」
 けれど、下から吹き付けるように吹いた風が、イオレッタの落下速度を低下させた。足音一つ立てることなく、地上に降り立つ。
(精霊使いとしての能力、隠しておいて正解だったわね。いつか、こんなことになるんじゃないかって思ってた)
 ふり返って屋敷を見てみるけれど、誰もイオレッタが出てきたことには気づいていない。
 もう、この家に用はない。イオレッタは、足取りも軽く歩き始めた。
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