捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
 眉間に皺を寄せつつも、足取りは軽い。
「皆が、私の側にいてくれるから大丈夫」
 イオレッタの周囲をふわふわと精霊達が飛び回る。イオレッタの契約している精霊達だ。家からの脱出を助けてくれた風の精霊に、土の精霊、それから水の精霊だ。
 母と同じように、イオレッタも自分の能力を隠してきた。魔力で縛らずとも、精霊と意思の疎通ができる。シャロンよりも強い力を持っている。
(絶対に、利用されるに決まってるしね!)
 精霊使いとして誇りを持っているあの男のことだ。イオレッタに精霊使いとしての能力がある――それどころか精霊師である――と知ったら、イオレッタをいいように使うだろう。
 昔は、彼に愛されることを望んだこともあったような気もするが、そんな感情、とっくにどこかに行ってしまった。
(領民のことは心配しないで済むのはついてたわよね。あとのことは考えず、出ていけるもの)
 幸いなことに、ベルライン伯爵は、搾取するタイプの領主ではなかった。
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